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本の紹介: バベルの図書館 ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」より

投稿日:2018-05-24 更新日:

バベルの図書館 La biblioteca de Babelという短編小説を知っていますか?
ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899-1986)というアルゼンチン出身の作家によるものですが,奇妙なお話です.

バベルの図書館

無限大に書籍を集めた架空の図書館の話です.この図書館の特徴は,

1. 6室の書架のある閲覧室は6角形のフロアで,それが上下に無限大に続いています.

2. 書架には全て同じ大きさの本にそろえてあり,1冊410ページで構成されています.各本は1ページに40行,1行に80文字という構成です.

3. 本の大半は意味のない文字の羅列となっています.従って,本の題名は無意味か内容と一致していません.

4. 全ての本は22文字のアルファベット(小文字)と文字の区切り(空白),コンマ,ピリオドの25文字しか使われていない.

5. 同じ本は2冊とない.

本書はこの図書館で一生を過ごした老司書の述懐の形式になっています.彼はこの図書館を宇宙と呼んでいます.

これから何を考えますか?私は小中学生の時,テストの答えを思い出すのに

あああ…
ああい…
ああう…
ああえ…
ああお…

あいあ…
あいい…
あいう…
あいえ…
あいお…

あうあ…
あうい…
あうう…
あうえ…
あうお…

と片端から,「あ,い,う,え,お,…」の組み合わせを試みて答えを思い出そうとしたことを思い出しました.

歴史の年代などは事件や出来事の世紀さえわかれば,0-99までしかありません.しかも,登場する文字は,
(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の10個) x (0,1,2,3,4,5,6,7,8,9の10個)=100個

という限られた個数しかない, などということを考えてどうしたらそれを「楽し」て思い出せるか,あるいは覚えられるか,ということを考えていました.

その頃は,小説も文字の組み合わせなので,いつか新しい尽きるものだと思って価値がわかりませんでした.文字を組み合わせて,意味が通るものだけ拾い出し,集めれば小説になる位に楽観的に考えていました.

その後,無限大の概念を少し理解する様になって,文字の組み合わせによってつくられるものでも,無限大の中から見いだしてくることに,価値があるのだと知るようになりました.

作曲も単純化してしまえば,音符の組み合わせだけなのですが,無限大の組み合わせのなかから,人類に価値あるものを見つけ出す作業となります.単純な機械的な作業ではないということが分かります.

彫刻家の仕事も同様で,石の中に眠っている像を掘り出すと表現されますが,石から掘り出される形は無限大の数があります.

こういうことを考えされられる「バベルの図書館」について詳しく知りたい方は「伝奇集」を手にするか,もっと楽をしたければ下のWikipediaをご覧ください.

バベルの図書館Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%99%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8

バベルの図書館のシミュレータ

さて,以上の様に無限大について感覚的に知ることができるツールとして,バベルの図書館のシミュレータというのがあります.

バベルの図書館のシミュレータ
http://libraryofbabel.info/

このシミュレータで扱えるのは25種の文字ですが,組み合わせて文章として,例えば,「sangakaikuu no burogu kiji」として,検索すると,すでにこの図書館内の,

6pz6bw1m2d7a2
cclvy93uq5vhj
jcrhmyiluupg7
…-w2-s1-v20

に収められていることが,確認できます.このシミュレータでは3,200文字までしか扱えませんが,バベルの図書館では無限大となります.
自分の個人情報なども検索してみれば見つけられます.体験してみると,不思議な感覚になります.

例えば,DNAのコードも図書館に全て収まっているということであれば,全ての生物情報が収まっていることになります.

ここまでくると宇宙とか神の領域を感じます.

ところで,今更当たりまえのことを言う様ですが,コンピュータ内部の0,1の組み合わせだけでも,無限大であれば,無限大の内容を含めることができます.0,1の組み合わせをアルファベットに置き換えることができるからです.

そうなると,あらゆるプログラムコードも収められていることになります.

この様に考えるとコンピュータやAIは無限の可能性があるように思えますが,無限は有限の延長ではないところに限界があります.

現実世界では,この様な図書館をつくるのは実際の宇宙より大きくなってしまうので,空間的に実現不可能です.時間も有限ですので制限があります.

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でも,仮想の世界では数式として,空間的に無限大を扱うことが可能かも知れません.ただし,計算時間には限りがありますので,必ず物理的な限界があります.コンピュータ自体にも空間的,エネルギー的な制約があります.

それにしても,無限の世界を感覚的に理解しようとするといろいろと深く考えさせられます.

以上,短くするつもりの文章が,長くなりました.

最後に,ホルヘ・ボルヘス作「八岐の園 やまたのその」のプロローグからの言葉を紹介します.

「数分で語り尽くせる着想を500ページに渡って展開するのは労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である.よりましな方法は,それらの書物がすでに存在すると見せかけて,要約や注釈を差しだすことだ」

なるほど,ブログにも使えそうなアイデアです.現代ではウェブサイトリンクもあります.

こういう考えさせられる書物を日本語訳で読めるのはありがたいことです.私も,読んでいる途上ですが,興味があれば読んでみてはいかがですか?

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ホルヘ・ルイス・ボルヘスのデータ

本名:ホルヘ・フランシスコ・イシドロ・ルイス・ボルヘス・アセベード
Jorge Francisco Isidoro Luis Borges Acevedo

誕生:1899,アルゼンチン・ブエノスアイレス
死没:1986,スイス・ジュネーヴ

代表作:伝奇集,エル・アレフ,砂の本

作品の主題:夢,迷宮,鏡,無限と循環,架空の書物や作家,宗教・神など

邦訳書(小説)

● 伝奇集・エル・アレフ・汚辱の世界史,篠田一士訳,世界の文学9,集英社,1978年.
ラテンアメリカの文学1,集英社,1984年.

● 伝奇集,集英社「現代の世界文学」,1975年,初訳版は1968年.

● 砂の本,篠田一士訳,集英社,1980年.

● 集英社文庫,1995年,新版2011年,「汚辱の世界史」を収録.

● 不死の人,土岐恒二訳,白水社,1968年,新版1980年,1985年.
白水Uブックス,1996年,原題「エル・アレフ」.

● ブロディーの報告書,鼓直訳,白水社,1974年.
白水Uブックス,1984年.岩波文庫,2012年.

● 伝奇集,鼓直訳,福武書店,1990年.岩波文庫,1993年.

● エル・アレフ,木村榮一訳,平凡社ライブラリー,2005年.

● 悪党列伝,中村健二訳,晶文社,1980年.

● 汚辱の世界史,岩波文庫,2012年.

● ボルヘスとわたし 自撰短篇集,牛島信明訳,新潮社,1974年.
ちくま文庫,2003年.

● アレフ,鼓直訳,岩波文庫,2017年.

ホルヘ・ルイス・ボルヘス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%98%E3%82%B9

伝奇集 Ficciones Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9D%E5%A5%87%E9%9B%86


Borges,Daniel Bonevac,2013/11/15 Lecture 30, Jorge Luis Borges, of UGS 303, Ideas of the Twentieth Century, at the University of Texas at Austin, Fall 2013
テキサス大学の講義で,残念ながら邦訳はありませんが,内容は充実していて,わかりやすく,興味深い内容だと思います.


Entrevista completa con Jorge Luis Borges

今日はこれまで.ではまた.
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ここでは個人的に素晴らしいと感じた書籍を記録しておくとともに,ご参考までに紹介しています.
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